鹿児島の方言(薩隅方言)単語編)   

薩摩・大隅地方で使われている方言を一般的には「薩隅(さつぐう)方言」と呼んだりします。薩隅方言は、九州南端の西に位置する薩摩と、東に位置する大隅の両方に通じる方言の総称であるが県境付近の北薩と薩摩半島南東南端、大隅半島南端の一部には語彙や言い回しに大きな差異が見られます。「かごしま弁入門講座」の書から薩隅方言単語の一端を紹介します。

 一、形容詞

方言 標準語訳 方言 標準語訳
イミシ ひどい、意地の悪い、けちんぼ     エジ ずるい、
オロイ よくない、粗末な コエ つらい、難儀な
ミゴエ かたぐるしい マッナゲ 待ち遠しい、待ちわびる
キボシ 心細い、心もとない ヨダキ ものぐさな、いやがる
キゾガワリ 薄気味悪い ムゾカ 可愛らしい
オドナ 人を食ったような  オドは横道  シトッチョナ 同じような、相変わらずの
ジョジョナ たいした、たくさん、よほど ムクロナ ひどく
ボッケナ 大胆な、向こう見ずの テコネ もったいない
オゾケンネ 驚くべき カカランネ 意想外な、とっぴな
ゲンネ きまり悪い、仕方のない ウケ 多い、たくさん
チンケ 小さい、細かい ニケ 新しい
グラシ かわいそうな、ふびんな セカラシ うるさい、騒々しい
セワラシ いそがしい、多忙な ゾッサラシ だらしない、粗雑な
ヤワラシ やわらかな オセラシ おとなびた
コトロシ ぎょうさんな、驚くべき ヤゼロシ うるさい、めまぐるしい
ヒエクセ なまぐさい ワサワサシタ あっさりした、話などくったくない
ノサッタ 運がきた、幸運を授かった ケスッタ 人を食ったような、おどけ者
ヅンダレタ だらりとたれた、だらしない トイキッタ 思い切った

二、副詞

イッスン すこしも、断じて。「いっすんきかん」 サシツケ 早速、もうすぐ
シトハナ 一しきり シャイモ どうしても、無理やりに
ガッツイ 全く、その通り 「がっつい合うた」(計算などがぴったりあう)) ギッシ たくさん、うんと
スッタイ たいそう、とても「すったいだれた」 スッパイ 全部  「もんだや(問題は)すっぱいでけた」
ヨロッデ みんなで、一緒に 「ヨロッデ遊ぼや」(一緒にあそぼう) イカナコチ 必ずや、まさか
カタイゴチ 交替で、代わりばんこに ナゴブイ 久しぶり  「なごぶいおた」(久しぶりにあった)
ハイト いつも 「ハイトンこっじゃ」(終始あることだ) ハシト きりりと、しっかり 「ハシト行け」(気を引き締めて行け)
ブント ちっとも   「ブント へ」(たいしたことない) ゴロイト ついに、とうとう  「ゴロイト死んだ」
ゴッソイ 全部  「ゴッソイうっ食た」(みんなたいらげた) チョカッ 急に、突然に 「チョカッおみでた」(急に思い出した)
チングヮラッ 全部だめ めちゃくちゃに オテツキ たらふく 充分に「オテツキ食やい」(食べなされ)
キドキ 意外に 「100点をとるとはきどっなこっじゃ」 ヂンジ たくさん、多く
マレケン たまに  「マレケンニャ遊び来やい」(たまには遊びにおいで) ガンブイ いっぱい、器にいっぱい入った状態
ゾップイ びっしょり、ぐっしょり ヨクヨク 休み休み
アラツラ いい加減に  イッペコッペ あっちこっち
オモシツカモシツ いい加減に  シンパイコンパイ 非常に心配すること
ユイゴッスイゴッ 自由放任に ヨンゴヒンゴ ちぐはぐ
タダイマンコメ ちょっとの間に、すぐに イットキノコメ 瞬時に、時を移さず

三、動詞

アエル 落ちる アマル 子どもが人にたいして悪ふざけをすること
サルク 歩く、歩行する イミル 数や分量が増える
オエル 生える、芽がでる オズム 目が覚める 「声を出すと子がオズンど」
ネオズン 夜間子どもが目を覚ます オテケル 病気がぶりかえす
オラブ 叫ぶ、鳴く ケレル 卵のかえる  「ひよこがけれた」
セケル 赤面する、はにかむ ウットケル 倒れる、
ハントケル こける、倒れる ナエル 中風にかかる
ナオル 移転する ネマル 食物がくさる
ヤセヒボケル すっかりやせてしまう ヘガメル 食物などを加減して少なくする
ムカラエル 嫁にいく、嫁ぐ ヨク やすむ  「ヨクへ」(休め)
ヒエクイアガル 冷たい物を食べてぞくぞく寒くなる カキオ 間に合う   「汽車にカキオ」
ハラカク 怒る、立腹する セシコ 多忙を極める
ネヂュコ 反抗する ナンカカル もたれる、よりかかる
ダレクル ぶらぶらと元気のない状態 フテクロ ふてくされる
テナム 同道する ハッチク 行ってしまう
ネオル 病気する カカジル つめなどでひっかく
カタス 仲間に入れてやる ガル 叱る 「がいとばす」(しかりとばす)
ショノン そねむ ソビク 引っ張る
ホガス 穴をあける ヨバコ 呼ぶ、声をかける
チョクラカス じらす ヒボカス 魚類を串にさして火にかざす
ムゾカル かわいがる イッカセル 教えてやる
ツクジル 突っつく、くすぐる モンタクジル もみくちゃにする
コダクル 薪など長いのを短く切ること ウッセル すてる
ハメツケル 精出す チワイチワイする まごまごする、あわてふためく
ヤンカブル 髪をみだしている ミシタンヌスル 子どもが人見知りする
ハラガキーワク 大いに立腹する ヨカマネヲスル 気取る

四、助詞・その他

接頭語・接尾語
ケ死んだ 死んだ ケッされた 腐れた
ヒッたまがる びっくりする ヒッちゃえる 落ちてしまう
ヒンにげる にげてしまう ヒンまがる 曲がる
ヒンなく 泣く ヒンまける 負ける
ヒンねまい 腐る ヒンもどっ 帰る
ウッくやす こわす ウッせる すてる
ウッとけた 倒れた ウッちゃめた とりやめた
ホタイおてた 落ちてしまった ホタイまけた 負けてしまった
ホタイけしんだ 死んでしまった ホタイにげた 逃げてしまった
ふんタクル 踏みにじる うっタクル 何回も打つ

五、名詞  天体、気候、時間

キタゴチ 北東の風 ハエンカゼ 南風
ホメキ 蒸し暑さ サダチ 夕立
ナガシ 梅雨 ハダモチ 季節  「よかハダモッ」(いい時候)
ゴットオキ 起きるとすぐ ヨイノモト 夜の入り方、夕暮れ時

六、名詞   植物

トッサゴ ほうせんか ホトクイ めひしば
フツ よもぎ カタシ つばきの実
ヘビノシャクシ むさしあぶみという植物でサトイモ科の多年草。木の陰に生え、その花は薄気味が悪い。
ミンダレククサ 薬草、雪の下 イトウイ へちま
マンダラ けいとう イッサッ あおぎり
シマデコン さくらじまだいこん コシュ こしょう
ニガゴイ にがうり デッマメ だいず
トキッノヨメジョ とうもろこし ナッデデ なつみかん

七、名詞   動物

ボイ、アケス とんぼ バブタはおにやんまのこと アマメ ごきぶり
ドンクォビキ かえる コブ(コッ) くも
シタメ しらみ ツグラメ かたつむり
ヌイ あぶらむし ホヂョ 毛虫
かめむし ヨボシ にわとりなどのとさか
ベブ ベブンコ 子牛
蝿  タミナ たにし

八、衣・食・住

イショ 衣服 フセ 衣類にあてるつぎはぎ
ツケアゲ さつまあげ ケセンダンゴ にっけいの葉を使っただんご
ネッタボ もち米とサツマイモを材料にしただんご ショユ ごちそう
ブエン 生魚で塩気のないもの メシゲ しゃもじ
チョカ どびん キイバン まな板
ツリ いど ザナカ ざしき

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