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稲尾岳 錦江町,南大隅町,肝付町
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照葉樹の森稲尾岳 稲尾岳登山コースと稲尾岳風景 |
大隅半島南部の稲尾岳は、二等三角点のある枯木岳(かれきだけ)959mを最高峰に、ピークが930mの稲尾神社一帯の山の総称で、錦江町田代・南大隅町佐多・肝付町内之浦にまたがる。植生はシイ、タブノキ、イス(ユス)、アカガシ、スダジイ等の照葉樹森林が中心で、標高が高くなるにつれてヒメシャラが混在し、さらに上部にはモミを主体とした森林の垂直分布が見られ、世界的にみて希少な森林とされ、注目を集めている。植生が豊かなだけでなく、野鳥類、昆虫類にとっても種類や貴重種が多く、貴重な生息地となっている。近年、稲尾岳を含む照葉樹の学術的価値により、貴重な森林の保護や再生を目指し、保護指定や調査の動きが進んできている。
稲尾岳へは基本的に三つの登山コースが設定されており、体力や目的に応じてコースを選択でき、照葉樹の巨木や滝を巡りながら自然観察や山登りを楽しむことができる。 |
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自然石展望台から眺望した稲尾岳 |
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稲尾岳を目指す。登山コース案内 |
照葉樹の森登山コース案内表示板より |
稲尾岳への登山コースは上図の通り@稲尾岳ビジターセンターの西口登山口から稲尾神社山頂を目指す西口コースA北口登山口から稲尾神社山頂を目指す北口コースB林道滝巡りコース入り口から西口登山口までの滝巡りコースの3コースが設定されている。その他、西口コースと北口コースを組み合わせた周回コース、西口コースの稲尾神社から打詰へ下るコース等がある。 |
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西口コース登山記;西口コースから山頂稲尾岳を目指す |
稲尾岳ビジターセンターを出発して西口登山口から入山。清流の沢伝いに、「川の源」を通過して自然石展望台に着くも展望所からの眺めは深い霧で全く視界がきかない。帰りの時間帯には霧が晴れることを期待してモミやアカガシ等の照葉樹林内を踏査しながら枯木岳を目指した。20分ほどで三角点の枯れ木岳(959m)に着いた。小休止の後、目的地の稲尾岳に向かう。うっそうと茂った樹林内は、台風で倒れた巨木やかっての原生林をしのばせる朽ち果てた巨木があちらこちに散在していた。幹廻り4m近くもあろうかと思われるモミノキやアカガシ等の照葉樹林帯が続いており、樹林の深さを感じるとともに、自然の偉大さに圧倒された。最終ポイントの稲尾岳(930m)の山頂付近には稲尾神社の小さな鳥居と祠があり、ここで昼食。ここまでの行程が2時間半近くだ。気温は5度前後か、昼食をすませると寒さがこたえ、早々に引き揚げた。帰りは同じコースだ。視界ゼロだった自然石展望台付近の視界がかなり遠くまで開け、南西方向に開聞岳を眺望できた。気象条件が良ければ真南方向に種子島がはっきり見えるという。 |
登山記録;( )は通過時刻・撮影時刻を表示 |
霧に包まれた照葉樹の森ゲート 9:40 |
出発 ビジターセンター前 10:05 |
稲尾岳ビジターセンターを出発して西口登山口から入山 |
登山道西口から入山 10:27 |
清流の沢を登る。 10:35 |
ビジターセンターから10分で西口登山道。ここから清流の沢登りが始まる。 |
分岐距離表示板 10:46 |
川の源地点 10:52 |
20分程の沢歩きで川の源地点に到達 |
自然石展望台 11:04 |
枯木岳頂上三角点(959m) 11:33 |
川の源地点から15分程で自然石展望台。自然石展望台から更に25分ほどで稲尾岳最高峰の枯木岳に到着。 |
北口コース分岐点 11:48 |
岩テーブルの巨岩 12:20 |
枯木岳から10分で北口登山口からの分岐があり、稲尾神社へ向かう。途中岩テーブルの巨岩あり。 |
稲尾岳(930m)・稲尾神社 12:30 |
13:18 |
山頂付近や登山道一帯にはモミやアカガシの巨木群にヒメシャラなど多種多様な植物が見られ、森林生態系保護地域に指定されている。 |
再び自然石展望台 14:09 |
駐車場到着 14:55 |
西口コースは往路を引き返す。 |
稲尾岳(稲尾神社)を起点にしたコースは@往路を引き返す西口コースA分岐から北口コース、又は滝めぐりコースB打詰集落へ下る打詰コースが考えられる。 |
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打詰コース(稲尾神社から打詰登山口へ) |
今回、西口コースから稲尾岳(稲尾神社)へ登り、帰路を打詰(うちづめ)に下る打詰コースにチャレンジした。西口登山道入り口から稲尾岳(稲尾神社)まで150分。稲尾神社から打詰まで130分。打詰コース登山道ではモミ、アカガシ、ヒメシャラ、ヤマグルマ、イスノキ、マテバシイ、タブなどの巨木や稲尾スギの巨木を観察することができた。 |
西口コースから打詰へのコースと稲尾岳三角点表示 |
稲尾岳(稲尾神社)
稲尾神社近くの打詰への案内標 |
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打詰登山道の稲尾スギ |
打詰登山道の稲尾スギ |
打詰登山道沿いに立つ稲尾スギ。標識板には胸高直径94cm、樹高25m、推定年齢約2百年と記されている。天然木か植栽木か定かでないが現在、この一本の生息が確認されているのみで地元の打詰地区の協力で「稲尾スギ」と命名され、後世に残そうと大切に保存されている。 |
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登山道・樹林内風景(打詰コース) |
稲尾岳山頂一帯にはモミの巨木が点在。かつてはモミの純林が圧倒的な景観を誇っていたという。標高800m一帯ではアカガシ、ヒメシャラ、ヤマグルマ。400mから700m層ではイスノキ。300m一帯ではイタジイが大半でマテバシイ、タブなどが混在し、稲尾岳照葉樹の垂直分布を見ることができる。 |
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登山道脇ではモミ、ヒメシャラ、ユス、ヤマグルマ、タブなどの照葉樹巨木を観察。 |
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登山道・樹林内風景(西口コース) |
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樹林内沢の清流風景 |
水源涵養機能を持つ照葉樹林「川の源」の説明板 |
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霧に煙る神秘的な樹林内 |
樹林内にはコケむした倒木があちらこちらに散在する。 |
倒木更新が進む樹林内風景。森に明るい光が差し込み、倒木の上に若木が着床している。 |
樹林内の木漏れ日、樹間から樹林内に差しこむ太陽光線が神秘的だ。 |
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稲尾岳の照葉樹林の植生は詳しくみると海抜が増すにつれ見事な垂直分布を見せている。標高300mではスダジイ林が大半でマテバシイ、タブ、オガタマオノキ、ウラジロガシ等が混じる。標高400から700mではイスノキ林が断然多くウラジロガシ、アカガシ、タブ、クロガネモチ、サザンカ、ツバキ等が生える。標高800m付近ではアカガシ林へと移行し、イヌマキ、ヤマボウシ、ヒメシャラ、シラキ、アセビ、カヤ、シキミ等が見られる。800m以上山頂付近一帯ではアカガシ、イスノキの老木にモミを加えた樹林が見られる。 |
モミノキの巨木。800m以上の樹林帯ではモミノキやアカガシ、ヒメシャラ、ヤマグルマ、ミヤマシキミ等の樹木が見られる。 |
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垂直分布を見せる稲尾岳の照葉樹林 樹林内設置案内板より |
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メモ;「稲尾岳自然環境保全地域(1975年指定)」、国の「天然記念物(1967年指定)」、林野庁の「森林生態系保護地域」の指定//探訪日最終探訪日2012年3月04日ほか |
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2万5千分1地形図(国土地理院)で見る。 |
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